更新日: 2025年3月7日
現在は王子公園(灘区)の王子動物園内にあり、神戸では現存する最大級の規模を誇る異人館であり明治時代の最も優れた洋風建築の一つとしても知られる「旧ハンター住宅」。
1966年6月11日には国の “重要文化財” にも指定された、言わずと知れた神戸の有名観光地である『旧ハンター住宅』の内部が今年も公開されます。
ぜひ一度は館内を見てみたい「旧ハンター住宅」ですが、その歴史を知っていればきっと当時の情景が目に浮かぶように想像出来てより楽しめそうですよね!
今回は「旧ハンター住宅」の歴史を少しご紹介します☆
■「旧ハンター住宅」はいつ誰が建てたの?
最初に建築された時期は明確には分かっていませんが、1889年(明治22年)頃ドイツ人の A.グレッピー(アルフレッド・グレッピー)氏 が英国人の技師に依頼して神戸の北野町に建てたものとされています。
1890年(明治23年)に建築届が出されており、設計者についてはっきりとした確証はなくA.N.ハンセル (Alexander Nelson Hansel)氏とする説があるようです。
■A.グレッピー氏とはどんな人物だったのか
それでは「旧ハンター住宅」を建てたA.グレッピー氏とはどんな人物だったのでしょうか。
彼のもとで働いたことのある故大内保市氏は、神戸のタウン誌「月刊センター」の連載でA.グレッピー氏の生涯を当時の国際情勢を絡めながら詳しく述べています。
その中で「神戸港に外人居留地が出来て各国の商館が建ち、横浜や長崎からもどんどん外国人が集まっているという人の噂を聞き、日本婦人の清水ます様と国際結婚をして、すぐに神戸へ来たのだそうであります」との一説が。
神戸で国際結婚した日本人妻との生活を始めるためにこれほどの豪華な洋館を建てるなんて、A.グレッピー氏は裕福であったのはもちろんのこと、きっと愛妻家で素敵な人物だったのでしょうね!
■「ハンター住宅」と呼ばれるようになるまで
A.グレッピー氏が建てた洋館は、後に1907年頃当時の日本で造船・鉄鋼などの事業を手がけ日立造船の前身となる会社を興したイギリス人実業家 E・H・ハンター(Edward Hazlett Hunter)氏 が居宅を建てるために購入し、神戸の北野町背後の高台に移築されました。
神戸の発展に尽力したE・H・ハンター氏は国の経済活動の基盤となる重要な産業を数多く経営し、幕末に結ばれた不平等条約の改正でも英国本国に働きかけるなど力を尽くした人物で、日本の近代化に長年尽くした功績により1909年(明治42年)には当時の外国人としては破格の栄誉である “勲五等双光旭日章” を贈られています。
そしてE・H・ハンター氏の妻は大阪の薬種問屋平野氏の娘であった愛子夫人、彼女は夫を支えると共に婦人会・日本済生会・神戸保育院などの公共事業に力を尽くしたすばらしい女性でした。
神戸の歴史を語るには欠かせない、日本にとっても多大な功績を残した夫婦だったのですね!
ハンター住宅は移築時に大幅な改造が行われ、開放されていたベランダは “日本の風土に適さない” という理由で窓がはめこまれ、当時では大変貴重な窓ガラスが全面に使用されたとても特徴的な外観となっています。
(※ その他の建築概要は公式ページ をご参照ください)
■ 現在も神戸に眠るE・H・ハンター氏
晩年E・H・ハンター氏はハンター住宅にて余生を静かに送ったとされており大正6年(1917年)75歳で永眠、神戸の再度山修法ヶ原外人墓地に葬られています。
神戸の北野町にはその名残で今でも「ハンター坂」という地名が残されており、神戸だけではなく日本の発展のために尽力してくれたE・H・ハンター氏の功績を身近に感じることができるのです。
■ 灘区の王子動物園内に移築
E・H・ハンター氏亡き後、1952年(昭和27年)からハンター住宅は料理旅館として使われていましたが、昭和36年(1961年)の旅館の廃業に伴い解体されることになってしまいました。
学識経験者や建築家・市民による保存運動が高まる中、兵庫県がハンター住宅を買い取り昭和38年(1963年)に北野町から神戸市の王子動物園内の一角(現在の場所)に移築・保存されました。現在も神戸市所有で、文化スポーツ局文化財課が管理しています。
■ また北野に戻って来るかも!?
神戸市が現在は王子公園(灘区)内に移築・公開されている異人館「旧ハンター住宅」を、公園の再整備に伴いかつてあった中央区北野町に戻す検討を始めているとのこと。
王子公園は関西学院大学の新キャンパスや新スタジアムの建設、「王子動物園」のリニューアルなど再整備が計画されており、現在「旧ハンター住宅」がある場所は動物園から “スポーツゾーン” へと変更され、新スタジアムの建設予定地となっているようです。
「旧ハンター住宅」の移築が実現すれば、異人館街として知られる神戸・北野にまた新たな名所が加わることになりますね♪
当時の富裕な外国人の生活が見えてくるような豪華な建物の内部を見に、是非この機会に神戸の街を訪れてみてくださいね!
【「旧ハンター住宅」館内公開2025】
■館内公開日
4月、5月、10月:毎日内部公開(動物園の休園日(毎週水曜)を除く)
3月、6月、7月、9月、11月、12月:土曜・日曜・祝日のみ内部公開
※3月の春休み期間は平日も公開いたします。
8月、1月、2月:内部公開なし
※外観は、動物園の開園中であればいつでもご覧いただけます。
■公開時間
9時30分~16時30分
(11月、12月は9時30分~16時となります)
■住所
神戸市灘区青谷町1丁目1-4(王子動物園内)
■交通アクセス
●阪急 神戸本線 「王子公園」駅 西口から徒歩約8分 / 東口から徒歩約10分
●JR 東海道本線 「灘」駅 北口から徒歩約9分
●阪神 本線 「岩屋」駅 徒歩約17分
■駐車場
王子公園駐車場
(乗用車:2時間まで150円/30分、2〜4時間まで100円/30分、4時間を超えると50円/30分)
(※詳細は神戸市立王子動物園公式サイトご参照ください)
■入館料
無料 ※ただし、動物園入園料は必要
■お問い合わせ
重要文化財旧ハンター住宅(神戸市立王子動物園)
(※問い合わせ詳細は公式サイト をご参照ください)
■公式HP
神戸市立王子動物園
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