更新日: 2024年6月20日
チョコレートの語源『ショコラトル』とは?
■『ショコラトル』とは?
チョコレートやココアの原料となるカカオ豆は紀元前2000年よりも前から栽培されていました。カカオ豆を使用した最古の民族は南米に住んでいたとされ、その地域一帯の遺跡からテオブロミンというカカオに由来する成分が発見されたことから、カカオ豆を頻繁に使用していたことが分かったそうです。初めは他のフルーツと同様に、人々は種の部分ではなくその周りの果実だけを食べていました。しかし、何かをきっかけにカカオの種に熱を加えることで素晴らしい香りが生じることを発見し、炒ったカカオ豆をすりつぶし、お湯などで溶いた飲み物として利用するようになったと考えられているそうです。
その後、マヤ文明やアステカ文明では、カカオ豆は神が人々にもたらした「神の食べ物」として珍重されマヤでは貨幣の一部としても使用されるようになりました。アステカではカカオ豆はすりつぶして香辛料やスパイス等とともにお湯などで溶いた飲み物「ショコラトル(「苦い水」の意味)」として、王侯貴族の間でのみ普及しました。この「ショコラトル」こそが現在世界中で親しまれているチョコレートの語源だと言われているのです。
■南米からスペインへ~コロンブスとの出会い~
「ショコラトル」の歴史は16世紀の大航海時代に転機を迎えます。ヨーロッパ人として初めにカカオ豆と出会ったのは有名なコロンブスだとされています。コロンブスがアメリカ大陸にたどり着いた際、マヤの人々がカカオ豆をとても大切に扱い、それを貨幣として取引している場面を目撃したそうです。コロンブスはカカオ豆をヨーロッパに持ち帰りますが、この出来事よりもチョコレートの歴史を大きく変えたのが、1521年アステカ帝国を征服したスペインの貴族エルナン・コルテスとカカオ豆の出会いです。コルテスは時の皇帝モンテスマ2世と面会する機会を得ますが、その際皇帝が「ショコラトル」を愛飲していることを知ります。またアステカではカカオ豆が通貨として利用されるなど大変価値の高いものとして珍重されていることを知っていたので、カカオ豆とその「ショコラトル」としての飲み方をスペインに持ち帰ります。
■「ショコラトル」から甘い飲み物へ~ヨーロッパ全土での流行~
初め「ショコラトル」は苦い味のせいで受け入れられませんでしたが、スペインの人々によって砂糖やミルク、バニラを加えるなど新たなレシピが作り出されて「苦い水」と呼ばれた飲み物から温かくて甘い飲み物、つまり現在の「ココア」の様な飲み物に変化していきます。その後宮廷と上流階級の間で大流行します。
しばらくはスペインが独占していたカカオ豆ですが、フランス王ルイ13世に嫁いだハプスブルグ家出身のアンヌ王妃がフランスへ渡る際、「ショコラトル」を元にしたこの甘い飲み物をフランスに伝えたと言われています。その後カカオ豆を使った飲み物がオランダやスイス、イタリア、イギリスなどヨーロッパ全土に広まるのに時間は要しませんでした。
フランスでは「ショコラ」、イギリスでは「チョコレータ」などと名づけられ、様々にアレンジされました。また、イタリアに伝わったのはスペインの皇帝からトリノを拠点とするサヴォイア家の公爵エマヌエーレ・フィリベルトへ贈られたことが 始まりとされています。
■チョコレートの誕生
1828年、カカオ豆の歴史に再び転換期が訪れます。ココアパウダーのメーカー、バンホーテンの創業者として知られるオランダ人、ヴァン・ホーテンが、カカオペーストからカカオパウダーとカカオバターを分離することに成功したのです。元々「ショコラトル」を元にした飲み物は脂肪分が大変多く含まれていて、湯に溶かすと表面に油が浮いてドロドロとしていて飲みづらいという欠点がありましたが、ヴァン・ホーテンのカカオパウダーの発明により、大変飲みやすいものに改善されました。
また、このカカオパウダーの副産物として扱われていたカカオバターをカカオパウダーとたくさんの砂糖に混ぜて固形にしてみると、苦味の少ない、固形のまま食べることのできる食べ物。つまり現在のチョコレートが出来たということです。
その後ヴァン・ホーテンの発明したカカオパウダーは「ココア(飲むチョコレート)」として、カカオバターを使用した固形の物は「チョコレート(食べるチョコレート)」として、現代も親しまれています。
■人類を魅了しつづけるチョコレート
今やスーパーやコンビニ、駄菓子屋さんでも手に入るチョコレートに、このような長い歴史があることをご存知でしたか?
今、改めてその健康効果が注目されているチョコレートですが、その効果が科学的に明らかにされるずっと前の紀元前から、人々はカカオの効果に気づいていたそうです。
今日はゆっくりとチョコレートを味わいながら、チョコレートの長い歴史やそれに関わった人々の知恵や工夫に想いを馳せてみてはいかがでしょうか。